離れて暮らす親が一人暮らしをしていると、「空き巣に入られないか」「不審な訪問者を家に入れてしまわないか」「詐欺電話にだまされないか」と心配になることがあります。
高齢者の防犯対策では、高価な設備を一度にそろえる必要はありません。まずは玄関や窓、電話、訪問者への対応など、日常生活の中にある弱点を一つずつ減らすことが大切です。
この記事では、一人暮らしの高齢者と離れて暮らす家族が、今日から取り組める10の防犯対策を分かりやすく解説します。親の自主性を尊重しながら、無理なく続けられる仕組みを一緒に考えていきましょう。
緊急時の連絡先
- 事件や身の危険が迫っているとき:110番
- 犯罪か分からないが不安なとき:警察相談専用電話 #9110
- 訪問販売や契約トラブルの相談:消費者ホットライン 188
一人暮らしの高齢者に防犯対策が必要な理由
犯罪被害は年齢だけで決まるものではありません。しかし、一人暮らしの場合は、同居家族の目が届きにくく、不審な電話や訪問への対応を一人で判断しなければならない場面が増えます。
また、犯人や悪質業者が、家族構成、在宅時間、資産状況、生活パターンなどを探ろうとすることがあります。電話や訪問時の何気ない会話から、一人暮らしであることや家族が遠方にいることを知られてしまう可能性もあります。
一方で、家族が心配するあまり、親の行動を強く制限すると反発を招くことがあります。防犯対策は、親を管理するためではなく、親が今の生活を続けるための安全対策として話し合うことが重要です。
どの防犯対策から始めればよいか迷う場合は、次のフローチャートで現在の状況を確認してみましょう。

質問に沿って進むだけで、自分や家族に必要な防犯対策が分かるフローチャートです。玄関・窓の防犯、特殊詐欺対策、見守りサービス、家族との連絡体制づくりなど、安心して一人暮らしを続けるためのポイントを整理しています。
一人暮らし高齢者の防犯対策10選

一人暮らし高齢者が安心して暮らすための防犯対策10選を一覧で紹介。空き巣や特殊詐欺、訪問販売への備えから、防犯カメラや見守りサービスの活用、家族との連絡ルールづくりまで、今日から実践できる対策をまとめています。
1.玄関と窓の鍵を見直す
住まいの防犯で最初に確認したいのが、玄関と窓です。外出時だけでなく、在宅中も玄関や使用していない窓を施錠する習慣をつけましょう。
玄関には補助錠や防犯性の高い錠前、窓には補助錠や防犯フィルムなどを追加する方法があります。取り付ける際は、親が自分で開閉できるか、災害時の避難を妨げないかも確認してください。
古い戸建てでは、勝手口、浴室、トイレ、小窓が見落とされやすい場所です。家族が訪問した際に、家の周囲を一緒に歩き、鍵が壊れていないか、外から手が届きそうな窓がないかを点検するとよいでしょう。
2.訪問者をすぐ家に入れない
インターホンが鳴っても、すぐに玄関を開ける必要はありません。まずはドアを閉めたまま、相手の所属、氏名、訪問目的を確認します。
制服や作業着を着ているからといって、本物の宅配業者、点検業者、行政職員とは限りません。頼んだ覚えのない点検や工事であれば、「家族に確認します」「管理会社に確認します」と伝え、その場で家に入れないようにします。
宅配便は、置き配、宅配ボックス、日時指定などを活用すると、対面する機会を減らせます。集合住宅では、オートロックがあっても、ほかの住人と一緒に入ってくる人がいるため油断は禁物です。
3.インターホンや玄関周辺を見直す
カメラ付きインターホンがあると、玄関を開けずに相手を確認できます。録画機能があれば、不審な訪問の記録を家族や警察へ相談する際にも役立ちます。
夜間に玄関周辺が暗い場合は、人感センサーライトを設置する方法もあります。家の周囲を明るくし、人の動きを周囲から見えやすくすることは、侵入をためらわせる対策の一つです。
ただし、防犯カメラやセンサーライトを設置する際は、道路や近隣住宅を必要以上に撮影しないよう、角度や設置場所に配慮してください。
4.固定電話を常に留守番電話にする
特殊詐欺対策では、犯人と直接話さない仕組みをつくることが重要です。固定電話は、在宅中でも留守番電話に設定し、相手の名前と用件を聞いてから必要な電話だけ折り返す方法が有効です。
非通知番号や知らない番号の着信を拒否できるサービス、防犯機能付き電話、通話録音を知らせる機器なども検討できます。
親が「電話に出ないと相手に失礼」と感じる場合は、「知っている人なら留守番電話に名前を入れてくれる」「急ぎなら何度か連絡が来る」と説明すると受け入れられやすくなります。
5.電話でお金の話が出たら一度切る
親族、警察官、役所、金融機関、通信会社などを名乗る電話であっても、お金、暗証番号、キャッシュカード、ATM、未納料金などの話が出たら、その場で対応せずに電話を切ります。
相手が伝えてきた電話番号へそのまま折り返すのではなく、家族が登録している番号や、公式サイト・請求書などで確認した代表番号へ連絡してください。
警察官や金融機関職員などを名乗る相手から、「秘密にしてください」「電話を切らないでください」「今すぐ対応しないと逮捕されます」などと言われても、慌てて従わないことが大切です。
6.家族だけの合言葉と連絡ルールを決める
親族を装う詐欺への備えとして、家族だけが知っている合言葉を決めておく方法があります。ペットの昔の名前、家族旅行の場所など、第三者がSNSから簡単に推測できない内容にしましょう。
あわせて、次のようなルールを決めておくと安心です。
- お金を振り込む前に必ず家族へ電話する
- キャッシュカードや通帳を他人に渡さない
- 暗証番号を電話や訪問者に教えない
- 知らない番号からの依頼にはすぐ応じない
- 家族を名乗る相手から電話番号変更の連絡が来ても、元の番号へ確認する
ルールは紙に書き、電話機のそばや冷蔵庫など、目につく場所に貼っておくと実践しやすくなります。
7.訪問販売や点検商法はその場で契約しない
「屋根が壊れている」「給湯器の点検が必要」「近所で工事をしているので無料で見ます」などと言って訪問し、不安をあおって高額な契約を迫る手口があります。
頼んでいない訪問販売や点検は玄関内へ入れず、その場で契約しないことが基本です。名刺、会社名、見積書などを受け取っても、すぐに署名や支払いをせず、家族、管理会社、別の事業者へ確認します。
断った後も勧誘を続けられた場合や、契約してしまって困っている場合は、消費者ホットライン188へ相談してください。訪問販売では、一定の条件を満たせばクーリング・オフが利用できる場合があります。
8.外から一人暮らしと分かりにくくする
郵便物や新聞がたまっている、夜になっても家が真っ暗、庭や玄関周辺が荒れているといった状態は、長期間留守にしている印象を与えることがあります。
郵便物はこまめに回収し、長期間不在にする場合は郵便や新聞の停止手続きをします。タイマー付き照明を使い、決まった時間に室内灯を点ける方法もあります。
表札に家族全員のフルネームを記載することや、SNSへリアルタイムで外出・旅行情報を投稿することも避けた方が安全です。
9.見守りサービスや防犯機器を活用する
離れて暮らす家族だけで毎日状況を確認するのが難しい場合は、見守りサービスや防犯機器を組み合わせる方法があります。
例えば、室内センサー、見守りカメラ、緊急通報機器、GPS端末などは、それぞれ役割が異なります。防犯カメラは玄関周辺の確認、緊急通報機器は体調不良や不審者への備え、GPSは外出時の位置確認に向いています。
- 高齢の親を見守る方法7選
- 親の一人暮らしにおすすめの見守りサービス10選
- 高齢者向け見守りセンサーおすすめ比較
- 高齢者向け見守りカメラおすすめ10選
- 高齢者向け緊急通報サービスおすすめ10選
- 高齢者向けGPS見守りサービスおすすめ10選
機器を導入するときは、親の同意を得ることが大切です。監視されていると感じさせないよう、「何かあったときにすぐ助けを呼べる」「今の一人暮らしを続けるため」と目的を説明しましょう。
10.家族・近隣・地域で見守る仕組みをつくる
防犯機器だけでは、すべての危険を防ぐことはできません。家族、近隣住民、民生委員、地域包括支援センターなど、複数のつながりを持っておくことが大切です。
家族は連絡する曜日や時間を決め、電話に出ない場合の確認手順も決めておきます。信頼できる近隣住民がいる場合は、異変があった際の連絡方法について、親の同意を得たうえで共有しておくと安心です。
親が電話に出ないときの対応を含め、生活全体の確認事項は親が一人暮らしになったら最初にやることでも整理しています。
親の住まいで確認したい防犯チェックリスト

一人暮らし高齢者が安心して暮らすために確認したい防犯チェックリストです。空き巣や特殊詐欺、訪問販売への備え、防犯機器や見守りサービスの活用、家族との連絡体制づくりなど、日頃から見直したいポイントをまとめています。
親の家を訪問したときは、次の項目を一緒に確認してみましょう。すべてを一度に改善するのではなく、危険度が高い場所から順番に対応します。
- 玄関、勝手口、窓の鍵が正常に使える
- 在宅時も玄関を施錠している
- 窓に補助錠や防犯フィルムを検討している
- インターホン越しに相手を確認できる
- 頼んでいない訪問者を家へ入れない
- 固定電話を留守番電話に設定している
- 非通知や知らない番号への対策ができている
- 電話でお金の話が出たら家族へ相談する
- キャッシュカードと暗証番号を他人に渡さない
- 訪問販売をその場で契約しない
- 郵便物や新聞がたまっていない
- 家族の連絡先がすぐ分かる場所にある
- 110番、#9110、188の使い分けを知っている
- 家族だけの合言葉を決めている
- 不審なことを相談できる近隣・地域の連絡先がある
防犯対策を親に嫌がられたときの伝え方
親から「まだ自分でできる」「大げさだ」「監視されたくない」と言われることもあります。その場合は、年齢や能力を理由に説得するのではなく、犯罪の手口が変化していることを伝えましょう。
例えば、「高齢だから危ない」ではなく、次のように話すと受け入れられやすくなります。
- 「最近は警察官を名乗る電話もあるから、家族全員で同じルールにしよう」
- 「この電話設定なら、知らない相手と話さずに済むよ」
- 「玄関を開けずに確認できれば、お母さんも対応が楽になると思う」
- 「一人暮らしを続けるために、最低限の対策だけ一緒に考えよう」
選択肢を一方的に決めず、親に選んでもらうことも大切です。見守りサービスを嫌がる場合の話し合い方は、親が見守りサービスを嫌がるときの伝え方でも詳しく解説しています。
被害や不審な出来事があったときの対応
身の危険が迫っている場合
不審者が家に入ろうとしている、暴力や脅迫を受けている、犯人が近くにいるなど、緊急性がある場合は110番へ通報します。安全な場所へ移動できる場合は、無理に相手と対峙せず、鍵のかかる部屋や近隣の家、店舗などへ避難してください。
不審な電話や訪問を受けた場合
電話番号、訪問日時、相手の特徴、名乗った会社名、車のナンバー、渡された書類などを、無理のない範囲で記録します。犯罪か判断できなくても、不安がある場合は警察相談専用電話#9110へ相談できます。
訪問販売や契約で困った場合
契約書、領収書、名刺、録音、メッセージなどを捨てずに保管し、消費者ホットライン188へ相談してください。相手へ連絡する前に、専門窓口へ相談した方がよい場合もあります。
お金やカードを渡してしまった場合
すぐに警察と金融機関へ連絡します。インターネットバンキングのIDやパスワードを伝えた場合は、金融機関へ利用停止を相談してください。家族が本人を責めると、被害を隠すようになることがあります。まずは被害拡大を防ぐ対応を優先しましょう。
よくある質問
防犯対策は何から始めればよいですか?
最初は、玄関・窓の施錠、固定電話の留守番電話設定、訪問者をすぐ家に入れないという3点から始めるのがおすすめです。費用をあまりかけず、すぐに実践できます。
防犯カメラがあれば安心ですか?
防犯カメラは訪問者の確認や記録に役立ちますが、カメラだけですべての犯罪を防げるわけではありません。鍵、照明、インターホン、電話対策、家族との連絡ルールを組み合わせることが重要です。
親が知らない電話にも出てしまいます
在宅中も留守番電話に設定し、録音内容を確認してから折り返す運用に変えてみましょう。「電話に出てはいけない」と強く言うより、「必要な電話はあとで折り返せる」と説明する方が受け入れられやすくなります。
警察に相談するほどか迷います
事件や事故として緊急対応が必要な場合は110番です。緊急ではないものの、不審な電話、訪問、悪質商法などについて相談したい場合は、警察相談専用電話#9110を利用できます。
防犯対策にかける費用の目安はありますか?
必要な費用は住まいの状況によって異なります。留守番電話設定や家族ルールの作成はほぼ費用をかけずに始められます。補助錠、センサーライト、カメラ付きインターホン、防犯カメラ、ホームセキュリティの順に、必要性と予算を比較して検討するとよいでしょう。
まとめ|一度に完璧を目指さず、家族で続けられる防犯対策を
一人暮らし高齢者の防犯対策では、玄関や窓を強化するだけでなく、電話、訪問販売、特殊詐欺への備えも欠かせません。
まずは、次の5つを優先して始めましょう。
- 玄関と窓を確実に施錠する
- 訪問者をすぐ家に入れない
- 固定電話を留守番電話にする
- お金の話が出たら電話を切って家族に確認する
- 家族の連絡ルールと合言葉を決める
防犯対策は、親の自由を奪うためのものではありません。親が住み慣れた家で安心して一人暮らしを続けるための生活基盤です。親の意見を聞きながら、できるところから少しずつ整えていきましょう。
親の一人暮らし全体を確認したい方へ
見守り、防犯、緊急時の連絡先、生活環境などをまとめて確認する場合は、親が一人暮らしになったら最初にやることもあわせてご覧ください。

